療養生活(ニート生活)継続中です。すっかりダメ人間になって来週からちゃんと現場復帰できるか不安です。
頭の体操がてらに入院中に読んだ本の振り返りなど。
自分が入院した病院は病室での携帯、携帯ゲーム、パソコン一切禁止。
よって病室でできるのは本を読むかTVを見ることだけ。
事前に読む本をセレクトし入院前に全て購入して万全の体制で入院へ。
カミさんに「荷物減らせ」と咎められたが唯一の楽しみだったので重いを我慢して持ち込んだ。以下読んだ順に簡単レビュー。
■ミレニアム ドラゴンタトゥーの女(スティーグ・ラーソン)
手術前に読む。
2月にデビッド・フィンチャー監督でリメイクの映画が上映されるのでその前に読んでおこうと思いセレクト。
上巻は描写が冗長でどこが面白いのかと思ったが、主人公とハッカー女が出会う後半戦から面白くなる。
展開も二重三重にしてあって楽しめる。
かなり長編だがこれをどうやって映画に収めるのか?映画版が楽しみ。
■愛と幻想のファシズム(村上龍)
手術後ICUから出てきた日から読み始める。
先生に「もう本読めているんですか?回復早いですね」と言われたが熱で朦朧としながら読んでいた。話もカオス&暴力的なので熱でうなされながら読むのでちょうどよかったのかも。
円の価値が暴落し混沌としたリーダー不在の近未来の日本でファシズムを掲げる若きカリスマがのし上がる話。
「希望の国のエキソダス」と「昭和歌謡大全集」を足した感じ。つーかこの2作品が単なる焼き増しなのか。
弱者切り捨て強者だけが生き残るというポリシーがダーウィンの進化論にのせて語られているけど、ダーウィンの進化論は適者生存で強者生存じゃないじゃまいか?という疑問もあったりするけどまあいいか。
あと「狩猟社」「クロマニョン」「ザセブン」とかネーミングがいちいちダサい…。もうちっとカッコイイネーミングがあると思うんだが…。
硬直化したシステムを壊すために民衆が若きカリスマを求めているのは今の日本にも通じていることでそこの先見性は高いなぁ。
村上龍の最高傑作という人も結構多いがまあ確かにそうかもしれん。自分はバカらしい小説のほうが好きだが。
■ジェノサイド(高野和明)
今年のこのミス、文春のナンバー1なのでハズレはないだろうと思って読んだんですが…。
まあ面白いのは面白いんだけど、SF設定が甘いなぁ。あと登場人物がストーリーを説明するためのコマにしかなっていなくて感情移入ができない。日本とコンゴの二重構成にする必然性ってあるのか?
生化学の分野の情報は非常にディテールがしっかりしているんだけど、この小説も進化論のとらえ方がテキトーだなぁ。そんなに進化したアレなら保護しなくてもちゃんと生き残るだろう。ツッコミどころ満載すぎて鼻白む。
あと「ジェノサイド」ってタイトルは違うと思うけどなぁ。
最初書店に並んだ時に「映画化不可能」と帯にあったような気がするけど、別に映画化はできるだろう。
ただ展開とか描写が唐突すぎるのでそのまま映画化するとトンデモ映画になる気がする。
■日本沈没(小松左京)
1973年版映画はマイフェイバリットな映画ではあるが原作を読んでいなかった。
東日本大震災があった年に読むべきだと思い改めて読む。
これは世紀を超えて読まれるべき傑作。SF設定のディテール、日本人観、災害のディテールなど40年たった今でも色あせない。本当に素晴らしい。東京大震災後の復興で日本人が冷静に対応しているところや津波が海底のヘドロを巻き上げてどす黒いことなどディテールが冴え渡る。震災後に読むとディテールの確かさに舌を巻く。
有名な台詞「何もせんほうがええ」というのもこの原作版から入っている。
場面としては丹波哲郎のアツすぎる演技が秀逸な映画版のほうが好きだが、小説版はその意図も一緒に説明していて奥が深い。
映画版との違いは観客にわかりやすいようにするため場面と場面転換の整理と総理のキャラの肉付けくらい。内容的にはほぼ同じなので1973年版が傑作だったのは頷ける。平成版は「日本が沈没します」と言うこと以外は全部書き換えてしまったのでそりゃーダメになるわな。てゆーか平成版は沈没すらしないのか…。
■荒野へ(ジョン・クラカワー)
「愛と幻想のファシズム」の主人公鈴原冬二がしきりに「狩りは素晴らしい」「狩りこそ最高の快楽」「俺はあのヘラジカ」になりたいと連発するので、「これって『イントウザワイルド』の話に影響受けてるのかなぁ」と読んでみた。
しかし「愛と幻想のファシズム」が1986年に書かれていて、この小説の発端となる死体は1992年に発見されているので単なる偶然か。
内容は「アラスカの荒野にひとり足を踏み入れた青年。そして四か月後、うち捨てられたバスの中で死体となって発見される。その死は、やがてアメリカ中を震撼させることとなった。恵まれた境遇で育った彼は、なぜ家を捨て、荒野の世界に魅入られていったのか。登山家でもある著者は、綿密な取材をもとに青年の心の軌跡を辿っていく。全米ベストセラー・ノンフィクション。(「BOOK」データベースより)」映画『イントウザワイルド』の原作。
もの凄く簡単に説明すると恵まれた境遇の大学生が現代生活に嫌気がさしてアラスカの荒野で狩りをしながら旅をしていたら餓死した死体で発見されてしまいました、というお話。
自分も一人だけでだーれもいない山を登山しているとドキドキして猛烈に楽しいので気持ちはわからないではない。
一週間くらいヒマがあれば自分も東北の誰もいない山をちんたら歩いてみたい。東北の山は穏やかで人か少なくて無茶苦茶気持ちいいんだよなぁ。死ぬまでに大鳥池にもう一度行きたい。
■持ち込んだけど読まなかった本
◎ロンググッドバイ-村上春樹訳版。早川版は高校性の時に読んだ。話はすっかり忘れている。流麗で味わい深い日本語の村上版もいいのかもと思って買ってみたけど時間がかかりそうでヤメタ。
◎盲目の時計職人-リチャードドーキンス。「ブラインド・ウォッチメイカー」の改題新装版。15年前くらいに「ブラインド・ウォッチメイカー」読んでいたんだけど改めてダーウィンの進化論を勉強し直そうと思って再購入。途中まで読んだけど説明が冗長で挫折。しかし進化論の本ってどれも冗長じゃありません?「目の誕生」って本もそうなんだよなぁ。本題だけ書いたら1/3くらいで終わるんじゃね?と思う。
◎スティーブジョブズ 買ってはみたけれどマカーだった当時よりもジョブズに興味が薄れていて結局開きもしなかった。
◆総括
一番よかったのは「日本沈没」。「ミレニアム」は誰にでもお勧めできるベストセラー小説。
「愛と幻想のファシズム」は人を選ぶ。「ジェノサイド」はどーなんだろ。「荒野へ」は興味がある人だけ読めばいいかと。
共通したネタとして出てきたのがハッカー。「ミレニアム」「愛と幻想のファシズム」「ジェノサイド」の三つにハッカーが登場する。そんなに簡単にアメリカ軍のシステムとかハッキングできるの?魔法使いすぎてほとんどファンタジー。
もう一つの共通のネタがダーウィンの進化論。「愛と幻想のファシズム」「ジェノサイド」で引用されているけどなんか間違っている気がする。ダーウィンの進化論からすると機能が強化されることが進化ではなく、環境に適応したものが結果として生き残って進化するということのはずで、最も生き残る方法として正しいのは強くなることでも頭がよくなることでもなく多様性を維持することが正しい事だった気がするけど…。実際に現人類よりも脳の容量が大きかったネアンデルタール人は絶滅しているわけだし。
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