2013年5月12日日曜日

「永遠の0」を読んだ




「海賊と呼ばれた男」が良かったので同じ百田尚樹の「永遠の0」も読んでみた。

#以下ネタバレがあり。

前から読もうかどうかと迷っていたのだが神風特攻隊の話ので、礼賛型とかお涙頂戴パターンだと嫌だなぁ、と思い敬遠していた。

思想的にはフラットだが、太平洋戦争に関する史実の部分は紋切り型というかステレオタイプな印象。
というかよくよく調べてみると他の文献を引用しているのか。なるほど。Wikipediaにまるっきり同じ内容が書かれているのはご愛嬌?

太平洋戦争に突き進んだのが官僚的な組織のせいだ、とするのは現代では分かり易い切り口であるけども、太平洋戦争に突き進む流れはそんなに簡単な話ではないと思うが。小説だからその辺はすっ飛ばしてもいいけども。

違和感があるのは主人公宮部久蔵に割いているページ数よりも太平洋戦争の戦記に関するページが多いこと。
そしてそのほとんどが割とよく知られている事実であること。※要するに改めてこの小説で知る事実が少ない。
主人公を語るよりも太平洋戦争の主観を述べているのが多いのが気になる。
そういう歴史小説として考えると、太平洋戦争の歴史初心者へ読ませる本としてはいいかもしれない。

あとがきで児玉清が語っているように、泣かせどころはしっかりあり、そこでぐっとくるのは確かなのだが、大きな問題を置き去りにしたままにしているような気がする。

それは主人公宮部久蔵が特攻で死んだ理由が明確にされないこと。
何が何でも生きて帰ることに執着していたはずなのに、命令されたとたんにあっさり特攻してしまうのはおかしい。
非国民や村八分の汚名をそそがれようとも生きる手段はいくらでもあったはず。
しかも、その生きて帰れる可能性を手にしていたはず(機体の不良)なのにそれを別の人間に明け渡してしまうことも謎。
自分がソコがミステリーとしての根幹だと思っていただけに肩すかしをくらった感じ。

一応護衛機として特攻隊や桜花隊を守れなかったことに苦しみを感じている描写があるが、それを理由にしてしまっては「生きて帰る」ことのテーマが揺らいでしまう。

「生きて帰って」しまったら、そもそもお話にならないのだから死んでくれないと困るというのは作り手としては分かるのだが釈然としない。
この問題が自分には致命的で、読後感が悪く、ノレない感じ。

こちら映画化されるそうだが、監督が山崎貴監督だそうで。
インタビューに応じる老人がおもっきり説明セリフで史実を語るのは、心情を全部セリフで説明してしまう親切設計な山崎監督にあっているのかもしれないが…。
でも公開されたら観るだろう。白組が頑張って、零戦の空戦シーンはかっこよく描写されるだろうから。

残雪の尾瀬


連休が明けたら、いつもよりもブーストがかかって忙しく、今週は何をやっていたのか憶えていない。そして疲れた。
忘れないうちに連休にやったことを書こう。

GWに尾瀬とその周辺の燧ヶ岳と至仏山に登山に行ってきた。
4月末に70cmの積雪があったため、雪解けするどころか尾瀬ヶ原は一面の雪原。
これはこれで貴重な風景ではあったが雪が積もっているので登山の難易度は上がった。

■5/3(1日目)
鳩待峠-山ノ鼻-下田代十字路-見晴らしキャンプ場泊

 


鳩待峠から尾瀬ヶ原はほとんど傾斜がないのでアイゼンをつけずに歩く。
4末に積もった雪が腐っていて歩きにくく、さらに踏み抜き(雪の落とし穴みたいなもの)で油断がならない。
一度木道脇に踏み抜きにハマリ、膝を強打。捻挫したかと思うくらい痛かったが歩いてみたら影響がないのでそのまま歩く。
尾瀬ヶ原は一面の雪原。そして天気も晴れ。素晴らしいことこの上ない。
15時にテン場に到着。先客は二張りだけ。一面の雪原でドコに張って良いかわからず。適当に雪を踏み固めてテントを張る。山小屋でビールを買ってつまみを食べながら休憩。夕食を食べようとコンロの準備しようとするも、コンロを忘れたことに気づく。ガーン。寒いのにお湯が沸かせないのはツライ。
仕方ないので檜枝岐小屋で夕食で食べる。

■5/4(2日目)
下田代十字路-燧ヶ岳山頂-下田代十字路-山ノ鼻  


テント内は氷点下3度くらい。当たり前だが寒い。濡れたタオルを干しておいたら凍っていた。
モンベルの#3シュラフで寝るが着込めばギリギリ眠れる。
そういえば雪上テントは初めてだった。
4時に起きて諸々準備をして5時に出発。最初から12本爪アイゼンを装着してスタート。
燧ヶ岳への登山道(見晴新道)は一応トレースはあるものの2〜3人しか歩いてないようで踏み固まってなくて歩きづらい。最初はポールで歩いていたが、急登が始まったところでピッケルに持ち変える。
激しい急登故に途中に嫌になって撤退しようかと思い始めたところで稜線にでる。
稜線に出たあたりでハイドレーションのホースが凍り水が飲めなくなる。
岩場の急登をザクザクのぼって燧ヶ岳山頂に到着。
俎嵓側へ登山道はは雪のナイフリッジになっていて滑落したらアウト(死ぬ)感じだったので断念。
もと来た道を戻り再び下田代十字路に。
5時に出発、8時45分に頂上、11時30分に戻ってくる。ほぼ夏山と同じコースタイムで登って降りてきたが超絶にしんどい。雪道が歩きにくいせいか猛烈に体力を消耗する。
山小屋でラーメンを食べてテントを撤収。山ノ鼻へ移動。
ちんたら尾瀬ヶ原の雪原を2時間ほど歩く。
燧ヶ岳の急登が結構な疲労となって歩みが遅いし、モチベーションもダウン。
明日は温泉に入ってさっさと帰ろうかと思い始める。

■5/5(3日目)
山ノ鼻-至仏山-鳩待峠  



3時に起きる。筋肉痛もないし体調も悪くないので至仏山に登ろうと決め準備開始。
テントを撤収して5時から歩き始める。
山ノ鼻から至仏山への登りは延々と続く急登。汗が滝のように流れるのでハードシェルを脱ぐ。
1時間で森林限界を超える。一面の雪の斜面。
ここからはひたすら雪の斜面を直答していく。ポールで登れなくもないがピッケルのほうが安心。
稜線に出ると風が強く寒さがハンパない。再度ハードシェルを着て目出し帽をかぶる。
8時20分に至仏山山頂に到着。夏道のコースタイムを20分オーバー。
3時間ちょっとで登れたがこれは結構な急登。しかもアイゼン履いてテント装備を背負っているのでさらにハード。
気温は氷点下なのに服は汗でびっしょりという訳分からん状態に。
頂上は風が強く寒いので鳩待峠へ向けて稜線を下山する。
鳩待峠からは多数の登山者やスキー、スノボの人とすれ違う。こっちの登山道のほうが圧倒的に楽ちんだし景色も素晴らしい。至仏山に登るなら鳩待峠から登ったほうがよかったな。※バスの到着時間が遅いので初日に登るのを避けた。

戸倉までバスで移動し尾瀬ぷらり館で温泉に入る。
地方自治体が作った典型的な箱物だけど温泉はちゃんと源泉掛け流し。
施設も綺麗だし、お湯もフレッシュ。お湯は絶妙に硫黄臭くて良い感じ。
この温泉は良かった。これで休憩所があればもっといいのに。

その他気づいたところ。

・尾瀬では自然保護の観点から携帯基地局がない。携帯が通じたのは鳩待峠から至仏山の稜線のみ。遭難した場合の連絡手段とかを考えると通じたほうがいいような気がする。自分的には仕事上の連絡手段がないのは困るなぁと。

・燧ヶ岳を残雪期に見晴新道から登るのはキツイ。頂上まで延々急登が続くところへもってきて雪で足が取られるから体力が猛烈に消耗する。汗が滝のように流れるのに、稜線にでるとその汗が凍るなど、体温調整も面倒くさい。

・燧ヶ岳の柴安嵓の俎嵓側が雪壁となっていて、降りようとした人が俎嵓側の人に大声で制止されていた。

・GWなのに全然人がいない。登山道にも人がいない。歩いていると時として前後に登山者がいない場合もある。GWの喧噪がなく、静かに過ごしたい人にはいいかもしれない。

仕事がグイグイとギリギリな感じで忙しくなっているが、さて次はどこに行こう?
※仕事以外の目標というか、考えることをしてないと精神的な安定が保てないので。